ピラティスのロールアップをしようとしても、途中で身体が止まってしまう。勢いをつけないと起き上がれない。
そんなとき、「腹筋が弱いからできないのかな」と感じる方は少なくありません。
しかし、ロールアップは腹筋力だけで決まる動きではありません。背骨の曲がり方や骨盤との連携、股関節や脚の使い方など、さまざまな要素が関係しています。
反対に、ハムストリングスの張りや前腿の力を利用して、形としては起き上がれている場合もあります。そのため、上がれたからうまくできている、上がれないから身体が弱い、とは単純に判断できません。
大切なのは、無理に上がろうとすることよりも、背骨がどこから動き、どこで動きにくくなるのかを感じることです。
この記事では、まずロールダウンから動きをつかむ理由を確認しながら、骨盤と腰椎の連携や、途中で身体がカクンとなる原因についても少しずつ掘り下げていきます。
ロールアップは腹筋だけで行う動きではない
結論からお伝えすると、ロールアップができないからといって、単純に腹筋が弱いとは限りません。
もちろん、身体を起こしたり、背骨の動きをコントロールしたりするために腹筋は働きます。しかし、ロールアップは腹筋だけで身体を持ち上げる運動ではありません。
仰向けの状態から起き上がるまでには、背骨が順番に曲がること、骨盤が背骨の動きに合わせて傾くこと、股関節や脚が適切に働くことなど、いくつもの動きが関係しています。
腹筋に力が入っていても、背骨や骨盤の動きが途中でつながらなければ、身体はそこで止まってしまいます。身体の柔軟性や骨格、普段使いやすい筋肉にも個人差があるため、同じように動こうとしても感じ方は人それぞれです。
そのため、ロールアップを腹筋力のテストのように捉える必要はありません。できない場合は、力が足りないと決めつけるのではなく、どこで動きが止まり、代わりにどの部分が頑張っているのかを見ていくことが大切です。
では、形としてロールアップができている人は、背骨や骨盤も滑らかに動いているのでしょうか。実は、必ずしもそうとは限りません。
形として上がれていても、滑らかに動けているとは限らない
ハムストリングスの張りが強いと、骨盤の動き方にも影響します。レッスンでは、その張りや脚の固定感を利用することで、結果として身体を起こせているように見えるケースもあります。
また、前腿に強く力を入れ、脚を床へ押しつけるようにして頑張ることもあります。腹筋だけではなく、股関節の前側や前腿の力を使いながら、身体を一気に引き上げようとする動きです。
ハムストリングスや前腿が働くこと自体が悪いわけではありません。問題になるのは、それらの力が強くなりすぎて、背骨や骨盤の細かな動きが隠れてしまうことです。
勢いや脚の力を利用すれば起き上がれても、背骨が一本の棒のようにまとまって動いたり、途中の一部分だけが急に曲がったりすることがあります。
ロールアップで大切なのは、形を完成させることよりも、どの部分から動き、どこで動きが途切れているのかを感じることです。その感覚をつかむためには、無理に起き上がろうとするより、まずロールダウンから練習する方法が役立ちます。
アップを頑張るより、まずはロールダウンから
ロールアップが途中で止まると、何度も起き上がろうとしてしまいがちです。しかし、うまくつながっていない動きを繰り返すと、勢いや前腿の力を使うパターンが強くなることがあります。
そこで、まず取り組みたいのがロールダウンです。
ロールアップでは、仰向けの状態から重力に逆らって身体を起こす必要があります。一方、座った状態から始めるロールダウンでは、重力を利用しながら、身体を下ろす速度を自分で調整できます。
ただ後ろへ倒れるのではなく、重力に抵抗しながら少しずつ身体を下ろしていくことで、背骨がどこまで滑らかに動き、どの位置で支えにくくなるのかを感じやすくなります。
途中で急に身体が落ちたり、一部分だけがカクンと曲がったりする場合は、そこが現在コントロールしにくい場所です。無理に通り過ぎる必要はありません。
ロールダウンの中で動きを確認し、支えられる範囲を少しずつ広げていく。その積み重ねが、結果としてロールアップの動きにもつながっていきます。
ロールダウンでも身体が急に落ちてしまう場合は、補助を使いながら、背骨が順番に床へ近づいていく感覚をつくることから始めます。
補助を使って、背骨が順番に下りる感覚をつくる
例えば、膝を曲げて座り、両手で腿の裏を持つ方法があります。腕の力で身体を支えることで、背骨や骨盤を動かすための余裕が生まれます。トレーナーに身体を支えてもらいながら行うことも有効です。
補助を使うことは、楽をすることではありません。勢いで動きを通り過ぎず、身体をどのように動かしたいのかを感じるための方法です。
まずは骨盤をゆっくり後ろへ傾け、腰の下の方から少しずつ丸みをつくります。そのまま後ろへ倒れるのではなく、背骨の長さを保ちながら、一節ずつ床へ舞い降りていくような感覚で身体を下ろします。
途中で支えられなくなりそうな場所があれば、腿を持つ手やトレーナーの補助を少し強くします。動きを小さくしても構いません。急に落ちる直前で止まり、再び身体を起こす練習から始めることもできます。
補助を使いながら同じ経路を繰り返すことで、少しずつ手の力を減らしても動ける範囲が広がっていきます。

それでも腰のあたりが動きにくかったり、毎回同じ場所でカクンとなったりする場合は、単純な腹筋力ではなく、骨盤と腰椎の連携に目を向ける必要があります。
背骨と骨盤の動きをもう少し深く見てみる
ここからは、ロールダウンで動きが途切れる理由を、骨盤・腰椎・胸椎の連携からもう少し詳しく見ていきます。すべてを意識する必要はありませんが、自分の動き方を知る一つの手がかりになります。

骨盤と腰椎の連携がうまくいかないパターン
ロールダウンでは、背骨だけを丸めるのではなく、骨盤と腰椎がタイミングを合わせながら動く必要があります。
骨盤がゆっくり後ろへ傾くことで、その上にある腰椎にも少しずつ丸みが生まれます。この二つの動きがつながることで、上半身を一つの塊にせず、滑らかに床へ近づけることができます。
よく見られるのが、頭や胸は丸まっているものの、骨盤がほとんど動いていないパターンです。見た目には身体を丸めているようでも、腰の部分には丸みが生まれず、上半身だけが前後に移動します。
反対に、腰椎の動きが伴わないまま、骨盤だけが急に後ろへ倒れることもあります。この場合は、あるところまでは姿勢を保てていても、途中から身体全体が一気に落ちやすくなります。
大切なのは、骨盤を強く押し込んだり、腰を無理に丸めたりすることではありません。骨盤が動き始めるのに合わせて、腰椎にも少しずつ動きが伝わる感覚を探していきます。
この連携が途切れる場所は人によって異なりますが、特に動きの変化が表れやすいのが、腰椎と胸椎の境目にあたる部分です。ロールダウンの途中で毎回同じ場所がカクンとなる場合は、この境目の動き方が関係していることがあります。
腰椎と胸椎の境目で「カクン」となる
ロールダウンの途中で、腰の少し上あたりが急に折れるように見えることがあります。
この場所は、腰椎と胸椎の境目にあたり、専門的には胸腰椎移行部と呼ばれます。肋骨に囲まれた胸椎と、その下にある腰椎では動き方が異なるため、両者の動きがうまくつながらないと、境目の一部分に動きが集まりやすくなります。
例えば、胸のあたりは十分に丸まっているのに腰椎が動きにくい場合や、骨盤と腰椎は動いていても胸椎が硬い場合です。動きにくい場所を避けるように、動きやすい部分だけが急に曲がることで「カクン」とした動きが生まれます。
背骨はすべての場所が均等に曲がるわけではないため、一部分が大きく動くこと自体が直ちに問題というわけではありません。ただし、毎回同じ場所だけが急に曲がり、その前後がほとんど動いていない場合は、背骨全体で動きを分け合えていない可能性があります。
このとき、さらに強く身体を丸めようとすると、動きやすい部分へ力が集まりやすくなります。補助を使って速度を落とし、動きを小さくしながら、急に曲がる場所の上下にも少しずつ動きを広げていくことが大切です。

補助を利用することで、背骨を順番に動かす感覚をつかみやすくなります。
そこで意識したいのが、身体をただ縮めるのではなく、背骨の長さを保ちながら動くエロンゲーションです。
丸まりながらも、背骨の長さを保つ
エロンゲーションとは、身体をまっすぐ伸ばした姿勢だけで意識するものではありません。ロールダウンのように背骨を丸める動きの中でも大切になります。
身体を丸めようとすると、頭を胸へ強く近づけたり、お腹を押し潰すように縮めたりしやすくなります。これでは動きの小さな部分に力が集まり、滑らかに下りにくくなることがあります。
意識したいのは、背骨を短くたたむのではなく、長さを保ったまま大きなカーブを描くことです。骨盤から頭のてっぺんまでが遠ざかり続けるような感覚で、少しずつ身体を下ろします。
例えば、骨盤を後ろへ傾け始めたときも、頭まで一緒に引き込むのではなく、頭のてっぺんを斜め前へ伸ばしておきます。すると、背骨が一本の塊として倒れにくくなり、カーブを長く保ちながら動きやすくなります。
大きく丸まることや、床まで下りることを優先する必要はありません。背骨の長さを感じられる範囲で動きを小さくし、補助を使いながら丁寧に繰り返します。
屈曲を滑らかにしたいからといって、屈曲の練習だけを続ければよいとは限りません。背骨がさまざまな方向へ動ける状態をつくることも、ロールアップやロールダウンの動きにつながります。
屈曲だけでなく、さまざまな方向へ背骨を動かす
ロールアップやロールダウンでは、背骨を丸める屈曲の動きが中心になります。そのため、うまくできないと屈曲の練習を繰り返したくなります。
しかし、動きにくい場所を避けたまま屈曲を続けると、動きやすい部分だけを繰り返し使うことがあります。屈曲を滑らかにするためにも、一度ほかの方向へ背骨を動かしてみることが大切です。
背骨を後ろへ反らす伸展、左右へひねる回旋、横へ倒す側屈。それぞれの動きの中で、胸椎や腰椎、肋骨、骨盤がどのように動くのかを感じていきます。
例えば、身体をひねったときに左右差が大きかったり、横へ倒したときに一部分だけが動いたりする場合は、背骨の動き方を見直す一つの手がかりになります。

伸展・回旋・側屈を行えば、すぐにロールアップができるようになるわけではありません。目的は、一つの方向だけを繰り返すのではなく、背骨が動ける選択肢を増やすことです。
いろいろな方向へ無理なく動かしたあとにロールダウンを行うと、それまで動きにくかった場所を感じやすくなることがあります。屈曲だけに答えを求めず、背骨全体へさまざまな刺激を与えることが、滑らかな動きへの準備になります。
ロールアップは、できることだけがゴールではない
ロールアップができなくても、それだけで腹筋が弱い、身体が硬い、運動が苦手と判断する必要はありません。
ロールアップは、腹筋力だけではなく、背骨の動き、骨盤との連携、股関節や脚の使い方などが組み合わさった動きです。反対に、最後まで起き上がれていても、勢いや前腿の力を強く使っていることがあります。
大切なのは、形としてできたかどうかよりも、自分の身体がどのように動いているかを感じることです。
アップが難しい場合は、無理に起き上がろうとせず、補助を使ったロールダウンから始めてみましょう。背骨の長さを保ちながら、どこで動きが止まり、どこに力が集まるのかを丁寧に確認します。
また、屈曲だけを繰り返すのではなく、伸展・回旋・側屈など、背骨をさまざまな方向へ動かすことも大切です。動きの選択肢が増えることで、ロールアップやロールダウンの感じ方が変わることがあります。
ロールアップは、できるかできないかを判定するための種目ではありません。現在の身体の使い方を知り、より滑らかに動く方法を探すための一つのきっかけです。
AXIS PILATES & Conditioningでは、一つの動きを無理に完成させるのではなく、その方の身体の状態に合わせて補助や運動内容を調整しています。動きにくさを感じる場合も、できないことを責めず、身体を見直すところから始めていきます。
※動作中に痛みやしびれが出る場合は、無理に続けず、医療機関へご相談ください。
