デスクワークや家事で前かがみになる時間が長く、年齢とともに猫背や巻き肩、お腹の出方が気になってきた方もいると思います。
姿勢を整えようと、ローイングやラットプルダウンで背中を鍛えたり、反り腰を意識して腹筋運動を続けたりしている方もいるでしょう。
筋力トレーニングを継続することは、身体を支える力を高めるうえで大切です。一方で、「背中や腹筋を鍛えているのに、鏡や写真で見た姿勢はあまり変わらない」と感じることがあります。
このような場合、必要なのは単純にトレーニングの回数や重量を増やすことだけではありません。
筋肉に負荷が入っていても、動かしたい部分が動いていなかったり、別の部分で動きを補っていたりすると、いつもの姿勢や身体の使い方は残ります。
この記事では、筋トレをしても姿勢の変化を感じにくい理由を、ローイングとラットプルダウンを例に解説します。
筋トレをしているのに姿勢が変わらない理由
姿勢を整えるために、身体を支える筋力は必要です。
筋力トレーニングそのものが悪いわけでも、ローイングやラットプルダウンが姿勢を整える目的に適していないわけでもありません。
大切なのは、どの筋肉を鍛えたかだけでなく、トレーニング中に身体をどのように動かしているかです。
姿勢を整えるためには、筋力に加えて、次のような要素も確認する必要があります。
- 背骨や肩、股関節など、必要な部分が動くか
- 動かしたい部分を自分でコントロールできるか
- 別の部分で動きを補っていないか
- トレーニング中の動きを、立つ・座るといった日常動作でも使えるか
例えば、胸を起こそうとして腰を反っている場合、見た目には身体がまっすぐになったように見えます。
しかし、胸椎が動いたのではなく、腰の動きで胸を起こしている場合があります。この状態で背中のトレーニングを続けると、背中の筋肉には負荷が入っても、いつもの身体の使い方は残ります。
2017年に発表された研究では、60歳以上の男女99名に対して、脊柱の筋力強化と姿勢練習を組み合わせた運動を週3回、6か月間実施しました。その結果、対照群と比べて胸椎後弯の角度に3.0度の差が確認されています。
PubMed「Targeted spine strengthening exercise and posture training program to reduce hyperkyphosis in older adults」(2017年7月8日電子公開)
また、7件のランダム化比較試験、合計627名を対象とした2018年のシステマティックレビューでは、運動によって頭が前へ出た姿勢を示す指標に変化が認められました。
PubMed「Effectiveness of Therapeutic Exercise on Forward Head Posture」(2018年8月11日電子公開)
これらの研究からも、筋力トレーニングを行わないのではなく、身体の状態に合わせて、筋力強化と姿勢・動作の練習を組み合わせることが大切だと考えられます。

背中を鍛えても猫背が変わらないのはなぜ?
ローイングで肩甲骨を寄せるだけになっていないか
ローイングは、ハンドルやチューブなどを身体へ引き寄せ、背中を鍛える運動です。
猫背や巻き肩が気になる方にとって、背中の筋力を高めることは大切です。ただし、ハンドルを引いて肩甲骨を寄せるだけで、普段の姿勢まで変わるとは限りません。
例えば、次のような動きが起こることがあります。
- ハンドルを引くときに腰を反る
- 肋骨を前へ突き出して胸を張る
- 肩をすくめながら腕を後ろへ引く
- 頭が前に出たまま動作を続ける
- 胸椎が丸まったまま、肩甲骨だけを強く寄せる

このような動きでも、ハンドルを身体へ引き寄せることはできます。背中の筋肉にも負荷は入ります。
しかし、猫背が気になっている方が、腰を反って胸を張る動きを繰り返していると、胸椎や肩まわりを十分に動かせていない場合があります。
見た目には胸が起きていても、それが胸椎の動きによるものなのか、腰を反ることで作られた形なのかによって、身体の使い方は異なります。
また、肩甲骨を寄せることばかりを意識すると、首や肩に余計な力が入りやすくなります。トレーニング中は姿勢が整ったように感じても、力を抜くと元の姿勢へ戻ることがあります。
ローイングが悪い運動なのではありません。
姿勢を整える目的で行う場合は、どれだけ強く引けたかだけでなく、どの部分が動き、どこで動きを補っているかを確認することが大切です。
頭が前へ出る姿勢と、背中・肋骨・骨盤の関係については、「ストレートネックが気になる方へ|首だけでなく背中と肋骨から見直す姿勢」でも詳しく解説しています。
ラットプルダウンでバーを下ろすことが目的になっていないか
ラットプルダウンも、背中を鍛える代表的なトレーニングです。
一方で、バーを下ろすことが優先になると、腰を反る、肋骨を前へ突き出す、上半身を後ろへ倒すといった動きが起こることがあります。
また、バーを下ろしやすくするために、頭や上半身を前へ倒し、身体をバーへ近づけるような動きが出ることもあります。

このような動きでも、バーを下ろし、背中の筋肉に負荷をかけることはできます。
ただし、猫背や巻き肩を整える目的なら、バーがどこまで下がったかだけでなく、頭・肋骨・骨盤の位置を保ちながら、肩まわりを動かせているかを見る必要があります。
ローイングとラットプルダウンのどちらも、種目そのものではなく、どのように身体を使っているかが重要です。
反り腰が気になって腹筋をしても姿勢が変わらない理由
猫背だけでなく、反り腰が気になって腹筋運動を始める方もいます。
お腹まわりの筋力を高めることは、身体を支えるうえで大切です。しかし、腹筋運動の回数を増やすだけでは、普段の立ち姿勢まで変わらないことがあります。
例えば、腹筋運動中に次のような動きが起きていないでしょうか。
- 脚を動かすたびに腰が反る
- 肋骨が前へ開いたまま動いている
- 首や肩に強く力が入る
- 息を止めて身体を固める
- 回数をこなすことが優先になっている
このような状態でも、腹筋運動を続けることはできます。お腹の筋肉に疲労を感じることもあります。
ただし、立ったときに肋骨を前へ突き出し、骨盤との位置関係が崩れたままであれば、トレーニング中に鍛えた力が、普段の姿勢には十分につながっていない状態です。
反り腰を整えるために必要なのは、単にお腹を固めることではありません。
呼吸を続けながら肋骨や骨盤の位置をコントロールし、その状態を保って腕や脚を動かす練習が必要です。さらに、寝た姿勢でできた動きを、座る・立つ・歩くといった動作につなげていきます。
腹筋運動が悪いのではなく、どの姿勢で、どのように力を使っているかが重要です。
腹筋運動と背中・骨盤の動きについては、「腰痛には腹筋がいい?腹筋を頑張る前に見直したい背中と骨盤の動き」でも紹介しています。
鍛える前に確認したい3つのこと
筋トレを続けても姿勢の変化を感じにくいときは、回数や重量を増やす前に、身体の動かし方を確認してみましょう。
確認したいポイントは、次の3つです。
1.必要な部分が動いているか
最初に確認したいのは、運動の目的となる部分が実際に動いているかです。
例えば、腕を頭上へ上げるには、肩だけでなく、肩甲骨や胸椎の動きも必要です。
これらの部分が動かしにくい状態で腕を上げようとすると、腰を反る、肋骨を前へ突き出すといった動きが起こりやすくなります。
ローイングでも、胸椎や肩まわりが動かしにくければ、腰を反ったり、腕の力だけでハンドルを引いたりすることで動作を完成させます。
まずは重い負荷をかける前に、動かしたい部分を無理なく動かせるかを確認することが大切です。
2.別の部分で動きを補っていないか
運動中に目的の部分が動かないと、身体は別の部分を使って動作を続けようとします。これを代償動作と呼びます。
よく見られるのは、次のような動きです。
- 胸を起こすために腰を反る
- 腕を上げると肋骨が前へ開く
- 背中を使おうとして肩をすくめる
- 腹筋運動で首や脚に力が集中する
これらの動きがすべて悪いわけではありません。
ただし、姿勢を整える目的で運動をしているのに、毎回同じ部分で動きを補っていると、普段の身体の使い方も変わりにくくなります。
負荷や動く範囲を調整し、呼吸を続けられる状態で動作を確認することが必要です。
3.トレーニングが日常動作につながっているか
トレーニング中に姿勢を整えられても、座る、立つ、歩くといった日常動作で同じように身体を使えるとは限りません。
寝た姿勢で腹部に力を入れられるようになったら、次は座った姿勢や立った姿勢でも、肋骨と骨盤の位置をコントロールできるかを確認します。
背中のトレーニングで肩まわりを動かせるようになったら、デスクワーク中や歩いているときに、頭や肩がどの位置にあるかにも目を向けます。
大切なのは、一日中同じ姿勢を固めて保つことではありません。
身体の状態に合わせて姿勢を変え、必要なときに無理の少ない位置へ戻れることが、日常で使える身体につながります。
姿勢を整えるための運動の順番
姿勢が気になると、弱そうな筋肉を探して、すぐに筋トレを始めたくなります。
しかし、動かしにくい部分や代償動作を確認しないまま負荷を加えると、いつもの身体の使い方を繰り返すことになります。
姿勢を整えるための運動は、次のような順番で進めます。
現在の姿勢と動きを確認する
↓
動かしにくい部分を動かす
↓
その位置を支える練習をする
↓
負荷を加えて筋力を高める
↓
立つ・座る・歩く動作につなげる

まず、立った姿勢だけでなく、腕を上げる、身体を前へ倒す、背骨を丸めるといった動きも確認します。
胸椎や肩、股関節などに動かしにくさがある場合は、その部分を無理のない範囲で動かします。そのうえで、呼吸を続けながら頭・肋骨・骨盤の位置をコントロールし、腕や脚を動かします。
身体の使い方を確認できたら、ローイングやラットプルダウンなどの筋力トレーニングへ進みます。最初は動きを確認できる負荷から始め、姿勢や呼吸を保てる範囲で重量を調整します。
最後に、トレーニングで確認した身体の使い方を、立ち上がる、荷物を持つ、歩くといった日常動作へつなげます。
筋力トレーニングを行わないのではなく、身体の状態を確認したうえで、適切な順番で負荷を加えることがポイントです。
ピラティスと筋トレは対立するものではない
姿勢を整えるというと、ピラティスと筋力トレーニングのどちらを選ぶべきか迷う方もいると思います。
しかし、この二つはどちらか一方を選ぶものではありません。
ピラティスでは、呼吸を続けながら身体の位置を確認し、背骨や肩、股関節などをコントロールして動かします。
一方、筋力トレーニングでは、その動きを支える力を高め、少しずつ大きな負荷に対応できる身体をつくります。
例えば、猫背が気になる方であれば、最初に胸椎や肩まわりを動かし、頭・肋骨・骨盤の位置を確認します。
その状態で腕を動かせるようになったら、ローイングやラットプルダウンへ進み、背中の筋肉に負荷を加えます。
ピラティスで身体の使い方を確認し、筋力トレーニングでその動きを支える力を高める。この二つを組み合わせることで、トレーニング中の動きを日常の姿勢へつなげやすくなります。
大切なのは、「ピラティスか筋トレか」ではなく、現在の身体に何が必要なのかを確認し、適切な順番で組み合わせることです。
AXISで行っている姿勢・動作チェックや運動の組み合わせについては、「レッスン内容」をご覧ください。
筋トレをしても姿勢が変わらないときは
筋力トレーニングは、身体を支える力を高めるために必要です。
ただし、猫背だから背中を鍛える、反り腰だから腹筋を鍛えるという考え方だけでは、普段の姿勢まで変わらないことがあります。
筋トレを続けても姿勢の変化を感じにくいときは、次の3つを確認してみましょう。
- 必要な部分が動いているか
- 別の部分で動きを補っていないか
- トレーニング中の動きが日常動作につながっているか
大切なのは、筋トレをやめることではありません。
現在の姿勢と動きを確認し、動かしにくい部分を動かしたうえで、その状態を支える力を高めていくことです。
帝塚山で姿勢と身体の動きを見直したい方へ
大阪市住吉区・帝塚山のAXIS PILATES & Conditioningでは、立った姿勢を見るだけでなく、背骨や肩、股関節がどのように動いているかを確認します。
そのうえで、一人ひとりの身体に合わせて、ピラティス・コンディショニング・筋力トレーニングを組み合わせています。
「筋トレを続けているのに姿勢が変わらない」
「どこを動かせばよいのか分からない」
「自分のトレーニング方法が合っているか確認したい」
このように感じている方は、初回体験で現在の姿勢と身体の動きを一度確認してみてください。

